実務経歴証明書の書き方と提出の流れ。認められる人が押さえている3つのこと
電験三種を取って、いよいよ実務経験を積み始めた。あるいは、これまでの仕事が実務経験として認められそうだ。
そうなると次に出てくるのが、「実務経歴証明書って、どう書けばいいの?」という疑問です。YouTube「電気保安の学校」のコメントでも、いちばん多くいただく質問の一つです。
先に結論をお伝えします。書き方そのもので悩む必要は、実はあまりありません。 経済産業省が記載例を出していますし、迷えば申請先が教えてくれます。
本当に大事なのは、次の3つです。
- 事実を、具体的に、正直に書く
- 始める前に「証明してくれる人」を確保しておく
- 書いて認められた後、どこへ向かうかを決めておく
この記事では、経済産業省の記載要領をもとに書き方と提出の流れを整理しながら、この3つを順番にお話しします。
全体の流れ:誰に、何を出すのか
外部委託の仕事を受けるには、必要な実務経験があることを、事業場を管轄する産業保安監督部に確認してもらいます。主な提出書類は次のとおりです。
| 書類 | 必要な人 |
|---|---|
| 電気主任技術者免状の写し | 全員 |
| 実務経歴証明書 | 全員 |
| 点検等実施事業場一覧 | 電気管理技術者・保安法人の補助者として積んだ人 |
| 工事工程一覧 | 電気工事の仕事で積んだ人 |
| 保安管理業務講習の修了証の写し | 講習を修了した人 |
| 保安管理業務訓練の修了証の写し | 訓練を修了した人 |
様式と記載例は、経済産業省のページ「外部委託の受託に必要な実務経験期間の確認について」からダウンロードできます。監督部は、必要に応じて追加の説明や資料を求めることもあります。
何年の実務経験が必要か、どう数えるかについては、【2026年最新】電気管理技術者に必要な実務経験は最短1年にで詳しく整理しています。
実務経歴証明書は「働き方」で書き方と証明人が変わる
実務経歴証明書は、勤務先ごとに1枚作ります。そして、どんな立場で実務を積んだかによって、書く内容と、証明してもらう相手が変わります。
| 働き方 | 期間の数え方 | 証明してもらう相手 |
|---|---|---|
| ① 電気管理技術者・保安法人の補助者 | 21件の点検で1か月分 | 電気管理技術者、または保安法人 |
| ② 選任された電気主任技術者 | 選任されていた期間 | 設置者(または当時の雇用主) |
| ③ 選任された電気主任技術者の下で従事 | 従事した期間 | 設置者(または当時の雇用主) |
| ④ 電気工事業者・その従業者 | 21日の従事で1か月分 | 設置者(または当時の雇用主) |
③の場合は、その事業場の電気主任技術者の氏名を必ず書きます。期間中に主任技術者が交代していれば、期間ごとの氏名が必要です。
書き方のポイント
基本情報は「戸籍どおり」に
氏名は戸籍のとおり、本籍は都道府県名のみ、生年月日の元号は略さずに書きます。現住所は、マンションなら建物名と部屋番号まで書きます。細かいところですが、差し戻しの原因になりやすい部分です。
証明人の欄には、証明人の所在地・名称・役職名と証明した日付を書いてもらいます。2枚以上になるときは、用紙の間に証明人の割印が必要です。なお、証明は電子署名でも構いません。
職務の内容は「何を・どのくらいの頻度で・どんな立場で」
一番差が出るのが「職務の内容」です。経済産業省の記載例でも、次の4点を書くよう示されています。
- どのような業務か(日常点検、月次点検、年次点検、工事など)
- どのような頻度か(毎日、月1回など)
- どのような点検か(目視、測定など)
- どのような立場か(作業員、検査責任者など)
よくある失敗が、「電気の仕事に従事した」の一言で終わってしまうことです。これでは、受け取った担当者は何を経験したのか分かりません。
先日、私のチャンネルに出演してくださったMさんは、下水処理場での実務経験が認められました。Mさんの証明書には、次のような内容が具体的に書かれていました。
- キュービクルの点検を、どのくらいの頻度で行っていたか
- 中央監視室での受電状況の監視を、夜勤で4日に1回程度行っていたこと
- 水中ポンプの測定を、年6回以上行っていたこと
具体的な数字があると、担当者が作業の様子を想像できます。 それが認められる大きな要因になったと思います。
やっていないことは書かない。見学なら「見学した」と書く
Mさんの職場では、年次点検は保安協会が行っていました。そこでMさんは、年次点検を「1回見学した」と、そのとおりに書きました。
経験を大きく見せようとして盛ったり、取り繕ったりすると、どこかで辻褄が合わなくなります。そもそも、証明する側の会社も事実と違う内容に証明印は押せません。盛った内容は、結局どこかで止まります。
最初から最後まで、正直に書く。 これが結局いちばんの近道です。
電気工作物の概要は、代表的なものを
「電気工作物の概要」には、事業場の名称・所在地・需要設備の電圧・最大電力などを書きます。補助者として何十件も回った場合でも、すべてを書く必要はありません。件数の詳細は、次の一覧表のほうで示します。
補助者で積んだ人は「点検等実施事業場一覧」がカギ
電気管理技術者や保安法人の補助者として積んだ場合は、実務経歴証明書に加えて点検等実施事業場一覧(Excel)を出します。設置者と事業場名、点検した年月、件数を入力していくと、件数が自動で集計される表です。
作るときの注意点は3つです。
- 1か月に21件を超えても、1か月分です。超えた分は翌月に繰り越せません
- 21件に届かない月は、同じように届かなかった他の月と合わせて数えられます
- 一覧表の期間と、実務経歴証明書の期間を一致させること
もう一つ大事なのが、一覧に書く事業場が、その電気管理技術者や保安法人が実際に保安管理業務の契約をしている事業場かどうかです。国の側でも外部委託の契約状況は把握しています。証明してくれる相手と一緒に、事前に確認しておきましょう。
実は一番のハードルは「証明してくれる人」
21件ルールのおかげで、会社員のまま実務経験を積むことは現実的になりました。書類も、記載例どおりに書けば難しくありません。
それでも最後に残るハードルが、誰の下で実務を積み、誰に証明してもらうかです。
せっかく実務を積んでも、最後に証明印を押してもらえなければ申請できません。補助者として積む場合は、始める前に次のことを確認しておくことをおすすめします。
- 期間が終わったら、実務経歴証明書に証明してもらえるか
- 点検した事業場と件数の記録を、どちらがどう残すか
私は、電気管理技術者と業務委託契約書を交わしておくことをすすめています。雇用契約がいちばん確実とも言われますが、業務委託の形でも申請できます。契約書には、たとえば次の内容を入れておきます。
- 業務の内容(月次点検・年次点検を補助者として行うこと)
- 契約期間(積みたい年数に合わせて2年、3年など)
- 委託料(月次点検1件いくら、年次点検1件いくら)
迷ったら、申請先の監督部に聞く
「自分のこの経験は認められるのか」「この書き方で大丈夫か」と迷ったら、申請先の産業保安監督部に聞くのがいちばん早いです。
Mさんも、担当者の方に何度も相談しながら書き上げました。私自身の経験でも、監督部の方は本当に丁寧に答えてくださいます。お役所は気難しいというイメージがあるかもしれませんが、苦手意識を持つ必要はまったくありません。
たとえば、保安協会が外部委託で2か月に1回点検に来ていた事業場での経験が認められた方もいます。立場よりも、何をどれだけやってきたかという中身が見られます。自分のケースが当てはまるか分からなければ、電話でもいいので聞いてみてください。
書いて認められたら、ゴールではない
最後に、いちばん伝えたいことです。
実務経験が認められても、それはライセンスを手にしただけです。持っているだけで仕事になるかというと、まったくなりません。
運転免許と同じです。免許を取っても、行きたい場所がなければペーパードライバーのままです。通勤のため、旅行のため、目的があって初めて免許は生きます。そして最初は誰でも遠出が怖く、運転しながら少しずつ上手くなっていきます。
電験や実務経験も同じです。「資格さえあれば仕事がある」と考えるのは幻想です。資格を持っているだけで採用してくれる会社もありますが、なかには責任だけを負わせたい会社や、資格の頭数がほしいだけの会社もあります。
だからこそ、自分がどこへ行きたいのかを先に決めてください。目指す場所から逆算して、必要な資格を取り、技術を身につける。目的があれば、免状は生きた道具になります。
動画でも詳しく解説しています
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参考にした公的資料
- 経済産業省「外部委託の受託に必要な実務経験期間の確認について」(実務に従事した期間の確認に係る運用、実務経歴証明書の様式と記載要領)
- 中部近畿産業保安監督部近畿支部「保安管理業務に従事したい方」(2026年1月30日更新)
制度の要件や様式は見直されることがあります。申請の前に、所轄の産業保安監督部で最新の内容を確認してください。
株式会社電気保安HIKARI 代表 江嵜祐二
この記事を書いた人:電気保安HIKARI



